Which?
『鈴凛起きろー朝だぞ起きろー』
 んあ……朝?
 えと、なんだっけ。メカ鈴凛の第52次調整してて、ちょっと仮眠しようとベッドに入って……
「あー! 今何時!?」
 私はバッと飛び起きて、枕元のアニキ時計をつかんだ。おはよ、アニキ……じゃなくて!
「8時〜!? 遅刻じゃない!」
 今日は遅刻できないのよ。なんたって――
 今日は私の誕生日なんだから!

 誕生日に学校があるなんて何か理不尽よね。ま、家が遠い友達からもすぐにプレゼントが貰えたりするから、休日と平日のどっちがいいかなんて、一概には言えないんだけど。
「鈴凛、はいプレゼント!」
「ありがとー」
 クラスメートの秋子から手渡された包みを受け取って私は言った。
「私の誕生日のときはちゃんとお返ししてよね」
「お金があったらね〜。開けていい?」
「うん。確か欲しいって言ってた奴だよ」
「プルトニウム?」
「なわけないっしょ! 大体プルトニウムなんて何に使うのよ!」
「乙女の秘密〜」

 さ〜てさて、授業も終わったしどうしっよかな〜。夜には家にアニキが来るって言ってたし。
 あれ? なんか忘れてるよーな……
「お姉さま……」
 ギクーン! この声は……
「こ、小森さん……?」
「お姉さま、待ってました……」
 校庭の木の陰で佇んでいたのは、クラスメートの小森さん。
 どういうわけか、私のこと“お姉さま”って言って……懐いてくるのよね。一応同い年だよ?
「ど、どーしたの……?」
「今日、お姉さまのお誕生日でしたよね……それで、その……プレゼントを……」
「教室で渡してくれればよかったのに」
「他の人もいましたし……恥ずかしかったから……」
 何が恥ずかしいの!?
「そ、そう……」
「……じゃあ、これ……」
 そう言って彼女が渡してきたのは、可愛いラッピングがされた長細い箱。
「うん、ありがとう」
「あの、ネックレスです……」
「ネックレス?」
「はい。その……私と御揃いの……」
 小森さんの首には、確かに細い金属の鎖があった。
 う〜ん、金属系をつけるのは、ちょっと危ないんだけどな。
 まあ、学校行ってる間だけならいいか。御揃いっていうのが気になるけど。
「そうなんだ。じゃあ、明日つけてくるね」
「は、はいっ、お姉さま!」
 あう〜、なんか期待されちゃってる〜。

 そろそろアニキ来てる頃だし、家に帰るかな。
 でも、なーんか忘れてんのよね。なんだっけな?
「ただいま〜」
 キッチンではもう、お母さんが料理の準備をしてた。
「お帰りなさい。もう来てるわよ」
「来てるってアニキ?」
「ええ」
「どこにいるの? リビングにはいなかったみたいだけど」
「あなたの研究室を見るとか言ってたけど」
「ラボ!?」
 私は思わず声をあげた。さっきから引っかかってた疑問。
 次の瞬間、私はラボに向かって走っていた。

「アニキ!」
「よ、よう鈴凛……誕生日おめでとう」
 ラボに入ったすぐのところ、そこではアニキが複雑な姿勢をとっていた。両脇から射出された二本の槍の間に胴体をくぐらせて、下にあいた穴に落ちないように手を壁に引っ掛けていたの。
「ごめんアニキ……」
「そ、それより……たすけてくれ……」

 この間、防犯装置を新しく設置し直した時に、アニキの指紋データ入れるの忘れちゃったのよね。しかも、ラボには入れはするんだけど、罠が作動するっていう風に設置しちゃったもんだから。
 ごめんね、アニキ。

「誕生日おめでとう鈴凛!」
「ありがとうアニキ!」
 今まで私が生きてきた年の分だけケーキに立てられた蝋燭から、煙が一筋立ってる。生きてきた証。来年はもう1本煙が増えているに違いない。
「はい、プレゼント」
「うん、開けてもい……」
 ん? こ、これは……
「ネックレス……?」
「うん、たまにはどーかなーって……どした鈴凛?」
「う、ううん……別に……」
 もちろん鞄の中には小森さんから貰った奴が入ってる。
 明日、ドッチつけてこう……?
"Which?"closed.

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