禁忌
 目を、覚ました。
 認識の浅い光景はにじんでいた。
 それは、とても悲しかった。
 まるで、世界と隔絶しているような。
 見えるけど触れられない、ショーウィンドウの向こうを見ているような。
 一人ぼっちの、世界。

 アタシの横で、アタシが眠る。
 表面上は変わらない。そう、作った。アタシの形代。
 あなたは生まれてきて、幸せだった?
 この朝にしか思わない疑問を、あなたは毎日感じているんだろうか?

 夏が近づく。生命が騒ぐ。
 そのざわめきの中に、あなたは入っていけるだろうか?
 アタシに、それを手伝わせてくれるだろうか?
 
 アタシが生まれた日に、あなたは始まった。
 あなたはまだ、生まれてきてさえいない。
 あなたが生まれる日は、幾年か後の、この日でありたい。
 あなたは、嬉しくないかもしれないけど。
 アタシのあの人のために、アタシはそうしたい。
 それが、作り出す側ゆえの傲慢であっても。
 アタシがあなたなら、きっとそうしたい。
 
 この願いは、すでに愚かなのだろう。
 生命を嘲る、愚考を犯し、あなたがいつか悲しみを知り、
 あなたがいつか喪失を知るとしても、
 アタシはあなたを作り出したい。

「やっぱ、傲慢だわ……」

 さあ、もう少し眠ろう。
 そうしたらきっと、生まれた日を喜べる、アタシになれる。
"Undisappear scar"closed.

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