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Battle Field
「にいさま、もうもう――姫は見ていられないですの!」 「もうすぐなんだ、もうすぐなんだよ!」 「でも、でも…!」 泣き叫ぶ自分を振り払い、兄は炎の塔へと挑んでいった。 肉が焦げ、骨が踊り狂い、あらゆるものが質を変える。刃が回り、楯が唸り、兄の両手は蜂のように動きを速めていった。 灼熱の弾丸を寸前でかわし続け、兄は戦いつづける。 自分は見守ることしか出来ない。約束したのだ。如何に戦いが困難で、それが雲の如き高さに聳える城壁を乗り越えるような、突破不可能な事実に見えても、止めることは許されない。 「にいさま……!」 これは本来自分の役目なのだ。しかし今日だけは資格を剥奪される。それが昔から続いてきた定めだった。 それを享受する事に否定はしなかった。しかし、毎回後悔する。何故自分は、あの時頷いてしまったのか。胸騒ぎを認めなかったのか。優しい兄に一言断れなかったのか…… いや、不可能を願っても仕方がない。自分が兄を愛しているのは事実で、その願いを断れないのもまた、厳然たる現実なのだ。 だから今願うことが許されるのは、兄の無事だけだ。後悔が心臓を苛んでも、裏切りを囁かれても、それだけを白雪は思いつづけた。 テーブルに並べられた料理と、見事にデコレートされたケーキを前に、白雪は兄に告げた。 「にいさま、もう少しお料理の勉強をしてくださいですの」 「何で? 上手く出来てるじゃないか」 「出来れば、見てる側がもう少し安心できるようなスタイルをしてくださいって言ってるんですの」 そんな、毎年のセリフを吐きながら、白雪はケーキのろうそくを吹き消した。 "Battle Field"closed.
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