悪夢は今日来たる
「む」
「うっし!いっくよお!」
「鈴君……それは“ハメ”という奴ではないか…?」
「勝負に妥協はないよ!」
「ならば……」
「くうっ? アネキやるう!」
「伊達に……やりこんでいないよ……」
「ならば、とっておきを!」
「ふん……ゲージが足らない」
「ええ!?」
天弦奏無(てんげんそうぶ)……」
「しまっ……!」

「アネキ強すぎぃ、まさかあそこで玖修蓮華(くしゅうれんげ)かます?」
「鈴君……君はゲージを見落とす……勢いでいくタイプだね……。……それに得意はハウル・オブ・ミストだろう……? ……あれはモーションが大きいから、わかりやすい……」
「あっちゃあ、ばれちゃったか……。まあ、あたしが一番お気にでデザインしたキャラだから、ローレはさ」
 …………………
「おまあら、何やってんだ」
 声に振り向く、二人の妹。千影と鈴凛だ。
「あ、アニキお帰り〜」
「お帰り……」
「うむ、ただいま。……で、何で俺の部屋で、勝手に俺のゲーム機で、勝手に俺のゲームやってんだ?」
 床に転がったケースを拾う。
「いいじゃな〜い、アタシが作ったゲームだしさ。第一アタシがあげたんじゃない」
 そう、今二人がやっていたゲームは、鈴凛がバイトで参加した格闘ゲームだ。そんなにでかい会社のものではないが、それなりに出来がいい。結構売れたりもする。
「で、二人して今日は何の用だ?」
「なにって、そりゃあ、今日だから、ねえ?」
 鈴凛が千影に目配せする。千影はというと、いつもどおりの無表情だ。
「なんだっけ?」
 言うと、鈴凛が目を開く。
「千影アネキの誕生日じゃない!」

「あの、すみません。ごめんなさい。忘れていたわけではないのです。本当です。真実は真実として存在するものです。こうして謝っているのも真実です。誠意たっぷり。これを聞いたら切れたヤーさんも許してくれます。で、自分が今置かれてる状況は何なの?」
「………」
「千影アネキ……まだ煮立ってないよ」
「……段々と熱くしていくのもいいだろう…」
「うおい! 姉妹してなに物騒な会話を! あ、熱い!? おれ? なんかやばくない!? ねえ!」
「鈴君……そこの黒い花を……」
「これ? なんに使うの?」
「あああ! それやばい! つーか、今でも充分にヤバイ! なんかとても熱いよ!? ねえ! なんか空気が、泡が出てくるんですけど!?」
「例によって……毒草さ……。……罪人の入れられた浴槽に入れると……かゆみの止まらない湿疹が……」
「うっわ! 怖そう〜」
「熱い! あつ! グツグツいってるって! 助けて! お願い! 花でも金でも猫でも魔王の指輪でも持ってくるから! 勘弁してくれ!」
「こんにちは〜、お邪魔しま〜す」
「可憐君……」
「あ、やっほー」
「ああマイスウィートラヴィングシスター! ほら! 愛するお兄ちゃんがなんか牛のように煮られてるんだ! これはもー、すぐに助けなければ死んでしまいそう! むしろ死ぬから助けて!」
「千影お姉ちゃん、頼まれたもの買ってきましたよ」
「……ご苦労……だったね……」
「なに? その小瓶に入った深緑色でスライム状の物」
「うわ! なんか聞くだけで吐き気が出るものが! 熱い! 止めて! 火を! 火を緩めて!」
「千影お姉ちゃん、これなんに使うものだったの? 買ったときお店のおじさんにしつこく聞かれたから、千影お姉ちゃんに頼まれたって言ったら素直に渡してくれて……」
「フフ……これはね……(ボソボソ)」
「へ〜。なんかとっても楽しみ〜」
「楽しみって! 楽しくない、楽しくないから! ああああ、なんか足が痛い!」
 ………………

 皆様、妹への誕生日プレゼントは、決して忘れぬように……
"Don't Forget!!"closed.

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