兄くん争奪大シスプリバトル・ロワイアル!ポロリもあるよ!?
「千影あねぇの家で誕生日パーティーは1年ぶりだね!」
「どの妹の誕生日もそうでしょうよ」
「そりゃそうだけど」
「まあ、面白いって言えば面白いんだけど」
「それじゃ開けましょうか」
「うん!」
 ぎぃー……
「やぁ……ようこそ……」


「今日は……私のために……集まってくれて……ありがとう」
 長テーブルの上座で千影が厳かに告げる。
「う、うん」
「それはいいんだけど……」
 何か言いたそうな鈴凛と可憐に、千影が眉をひそめる。
「どうか……したかい?」
「ええっと……」
「暗くない?」
 全員が顔を上げる。
 天井を覆うはツタの絡まるシャンデリア。
 壁を飾るは魔術具。
 千影の後ろには仁王像のごとき大きさの悪魔像。
「……一応……祝い事ぽく……してみたのだが……」
「祝い事っぽくないよ! むしろ黒ミサ!」
「あれは……一応目的が……」
「はーい、はい、そこまで」
 ぱんぱん、と手を叩いて咲耶が言う。
「千影がこういうのは、昔からでしょ? それよりほら、ケーキ買ってきたから開けて開けて」
「ありがとう………」
 咲耶の差し出した箱を開けて、生クリームでデコレーションされたケーキを千影が出す。
「はい、蝋燭」
「ああ……ん?」
「どしたの?」
「太いね……十年分、ということか?」
「ううん、千年分」
「……………どういうこと、かなぁ?」
「あら。だって千影、何代も前の前世の記憶も残ってるんでしょ? だったら精神的にはもう千年超えてるんじゃない?」
 ピシィ!
「今の私は肉体年齢と同等と思ってくれて差し支えないんだがね」
「そうなの? でもそれじゃ、前世のお兄様との思い出もなしって事?」
「いや? だが私と君たちの間では、私は肉体年齢と同等ということだよ」
「うーん、年齢を重ねるごとに人間は年を取ることを認めたくないものよね」
「それは君のことじゃないかな? キャラコレですぐにおばさんになるといっていたのは誰だった?」
「あれは言葉のあやよ。私は永遠の咲耶、永遠の妹」
「年増はすぐに妄想ぶるな」
「なんですって!?」
「ちょちょー! 待った!」
 鈴凛が慌てて割って入る。
「今日はアネキの誕生日でしょ!? わざわざ喧嘩することないじゃない!」
「そうね。大人気なかったわ。私もまだ子供ね」
「そうだね。大人気なかったな。私もまだ子供だな」
「そんなことさらに若いことを強調しなくても……あ、そういえばさ、雛子と亞里亞はどうしたの?」
「ああ……彼女たちならそこに……」
 千影の指差したそこには、二つの箱があった。
「来た途端に倒れてしまってね……あのベッドに寝ている」
「いや違う! あれ棺桶!」
 二つの箱は黒塗りにされた棺桶だった。
「ぬ……あれは、ベッドではないのか?」
「違うよ!」
「やーね、これだからオカルトオタクは一般常識を知らなくて困るわー」
「オカルトの真髄を知らずしてそのような口を叩くな年増」
「すたーっぷ!……で、二人は大丈夫なの?」
「ああ……ただ眠っているだけだ」
 その言葉を聴いて、鈴凛がほっと胸をなでおろす。
「アニキがいたら、めっちゃビビってただろうね……で、アニキは?」
「ああ、兄くんなら……あそこに」
 ぱちん、と千影が指を鳴らすと、悪魔像の足元に兄が現れた。
 縛られて、気絶している兄が。
「な、なんで?」
「第一回……兄くん争奪大シスプリバトル・ロワイアル!ポロリもあるよ!?……開催さ」


「なんで?」
 テーブルにつくは10人の妹。千影、咲耶、春歌、鈴凛、衛、鞠絵、可憐、四葉、花穂、白雪。
 その中で衛が千影に聞き、千影はゆっくりと話した。
「……実は、最初に兄くんが来てね……それで、前々から試してみたかった『フェイト』という薬を飲ませてみたんだ……」
「何その今アニキがやってるゲームみたいな名前」
「その名のとおり……飲ませた対象に口付けをすることで……対象を奴隷にするのさ」
「乗ったわ」
「乗りましたわ」
「乗ったよ」
「乗った」
「乗りました」
「乗ります」
「乗るデス!」
「乗るー!」
「乗るですの♥」
「決定、だね」


 そうして、激しい戦いが三日三晩(誇張)繰り広げられた。
 マラソン、卓球、暑さガマン比べ、格闘、シスプリ(PS版)攻略……
 そしてついに、四人の選手が残ったのだー!(ナレーション:山田)


「よく、勝ち残ったね……」
「あんたこそ……」
「なんか私も残っちゃったけど」
 千影、咲耶、鈴凛が肩で息をする。
「さあ、司会の眞深くん……次は何の種目だい?」
「ってせんべい食ってるし」
「ちゃんと司会しなさいよ!」
「だってぇ、みんな長いんだもん。遅漏は嫌われるよ?」
「女だから関係ないわよ! それで、次の種目は!?」
「んー、じゃあジャンケンで」
『ジャンケンっすか……』


「こんなんなら最初からこうすればよかったじゃない……」
「やっぱり司会はじいやさん(女)がよかったのよー」
「文句を言わない……じゃーん、けーん」
『ぽん!』
『………え?』
 千影、パー。
 咲耶、パー。
 鈴凛。パー。
 ただ独りチョキなのは……
「おめでとー! 優勝は、燦緒あんちゃんでしたー!」
『何ーーーーーーーーーーーーーーーーー!?』


「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「男よ男!? そんなのがお兄様と!?」
「反対だ……こんなのは、予想外だ……」
「うーん、いまさらそんなこと言われてもね」
 ぽりぽりと頬をかく眞深に、咲耶がしなだれかかる。
「あのね、眞深ちゃん。やっぱり薬を使って人の心を操るなんて、よくないわ」
「最初に言ってよそういうこと」
 冷たく突っ放す眞深に、咲耶たちは叫んだ。
「こうなったら、実力でとめる!」
「メカリンリン37564号発進!」
「Adhect!!」
「はーい、毒ガス攻撃」
『サ○ーン!?』
 ぶしゅー、と紫色のガスを吹き付けられ、三人は地に沈んだ。
「ぐっ……がっ……」
「眞深〜……」
「不覚……」
「はーい、それじゃあんちゃん、やっちゃって♥」
「ああ」
 意気揚々と兄に近付いていく燦緒。
「う、奪われてなるものか〜……」
 鈴凛は震える手で、ポケットの中のボタンを押した。
 メカリンリン37564号の目が光る。
≪自爆装置、作動≫



「う、う〜ん……」
 深い眠りから覚め、兄は目の前の光景に驚いた。
「う、うわっ!」
 瓦礫。瓦礫。瓦礫の山。
 そこに兄は、手足を縛られて佇んでいた。
 瓦礫の隙間から見える妹たちの手足。何故か恍惚とした笑みで失神している妹たち。
 カラスが鳴く夕焼け空の下、兄はつぶやいた。
「……なんで?」



"Mad Tea Party"closed.

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